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イタズラなつむじ風
突然、ワタシ達の傍らをつむじ風が駆け抜けて行ったかと思うと、目の前のお姉さんのスカートを靡かせて、何処かへと消えてしまったのだけれど、思わずお姉さんの下着の色がチラホラと見え隠れしてて………。
その時、思わずそのお姉さんと目と目が合ってしまったかと思うと、唐突に冷ややかな目で睨まれてしまって。
………………えっ!………どうして。
気が付くと、ワタシの傍らで、冬馬が締まりの無い表情を浮かべながら、お姉さんの太股の辺りを眺めてたのよね。結局、そのお姉さんは、何食わぬ顔でそそくさとワタシ達の前を通り過ぎて行ったのだけど………。
冬馬が、ワタシ達に呟いた。
「………あの姉ちゃん、多分ブルーだよ。」
秋帆が、冬馬に言った。
「冬馬のドスケベ!………アンタのお陰で、ワタシ達も一緒に睨まれちゃったじゃないの。」
その時、お婆ちゃんが諭すかの様に話した。
「まぁまぁ、その辺で許しておやりよ。皆、そうやって、一歩一歩大人に近付いて行くものなのだから。それに、男がスケベじゃないと、女は一生独身のまんまだよ。」
秋帆がお婆ちゃんに尋ねた。
「そう言うお婆ちゃんは、独身じゃないの?」
「まあねぇ。こんなワタシにも旦那様と呼べる人はいたかしらねぇ。それに、自慢の息子もいたにはいたんだけどねぇ………。」
ワタシは、お婆ちゃんに尋ねてみた。
「………皆は今、何処にいるの?」
その時、お婆ちゃんは思わず表情を曇らせてしまって………。
「………亭主は先の大戦で、死んでしまってね。息子も、赤紙が来てしまって、戦地に旅立ってそれっきりさねぇ。それ以来、ワタシゃ独りぼっちでねぇ。たまにアンタ達みたいな子たちが来てくれるから、なんとか励みになってるのかねぇ。」
「…………………………………………。」
実は、ワタシ達の中では、本当のお婆ちゃんと呼べる人がいなくて。パパとママの話だと、ワタシ達のお婆ちゃんもお爺ちゃんもワタシ達が生まれる前に死んでしまったみたいで………。
でも、2人とも詳しくは教えてくれないの。ある時、ワタシがしつこく尋ねてみたんだけれど、決まってパパもママも同じ言葉を呟くばかり。
「………お前が何時の日にか大人になった時に教えて上げるよ。」
………だからね。ワタシ達の兄弟みんなが茶屋で知り合ったお婆ちゃんの事を本当のお婆ちゃんの様に感じてしまったんだけれど。
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