死者との対話

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「あのう、山中さんそれはど、どういう事ですか」 「どういう事……?」 「いや、流石にこんな狭いとこに二三百って有り得んでしょ」 「なぜですか、いますよ。みんな重なっているんですから」 「重なって? ですか」 「だって死んだモンに実体は無いわけですから。なんぼでもいけますよ。オタクも全然いけますから」 「はあ、そんなもんですか」 「はい、死人なんてそんなモンです」 「ところで、なぜ山中さんだけ俺に見えたんですかね」 「それはよく分かりません。たまに別のとこでも住人がギャーって言ってますから、他の誰かも見えてるんでしょうね」 「はあ、そんなもんですか」 「幽霊なんてそんなモンじゃないですかね」 「なんか波長が合うとかですかね」 「ああ、誰かも言ってましたよ、そういう事を。でもあんまり長くは続かないみたいですよ」  俺は少し安心した。永久にこの男の姿が見えるんじゃ、事故物件なんて平気とは二度と言えない。俺はちょっと山中さんが怖くなってきた。
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