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(side 輝)
二ヶ月前、冬馬くんに母の日のプレゼント選びのつき添いを頼まれた。独身の男の人が母の日のプレゼントをするなんてと意外に思った。でも冬馬くんらしいとも思った。冬馬くんは誰に対してもやさしかったから。だからそんな冬馬くんのお母さんのために一生懸命プレゼントを選んであげたいなと思った。
◇◇◇
四月中旬の日曜日。わたしは冬馬くんの車でデパートに来ていた。
「なにを買うのか決まってるの?」
「ぜんぜん。毎年プレゼントしてるからネタ切れなんだよ」
「去年はなにをあげたの?」
「イヤリング。その前はネックレス」
「すごーい! 彼女へのプレゼントみたいだね」
「言っとくけど、俺はマザコンじゃないからな」
「そんなこと、ひとことも言ってないでしょう」
毎年、母の日にプレゼントをあげるなんて冬馬くんはやっぱりやさしい。冬馬くんが息子で、お母さんは幸せだろうな。
冬馬くんのお父さんが亡くなってから、お母さんがすごく苦労をしてきたのは冬馬くんから少しだけ聞いていた。休みなく働き、自分のものはほとんど買わず、冬馬くんの大学の学費を稼いでくれたそうだ。それを聞き、お母さんにはおしゃれに関するプレゼントをしたいと思った。
「イヤリングにネックレスかあ。王道いかれちゃったな」
「別になんでもいいよ。エプロンとかパジャマとかそんなもんでも」
「それもいいけど、もっと華やかなものにしようよ」
「たとえば?」
「そうだなあ……。あっ!」
わたしは一階の売り場に冬馬くんを連れていった。
「これなんてどう?」
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