3.彼のついたやさしい嘘

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「スカーフか。でもありきたりじゃないか?」 「冬馬くんのお母さんはスカーフを持ってる?」 「そういえば見たことない」 「なら、ひとつぐらい持っていてもじゃまにならないよ。スカーフってけっこう便利だよ」  前にインターネットの通販でスカーフを眺めていたとき、あまりにも豊富なバリエーションで興味がわいた。うちのお母さんに買おうかなと思っていたのだ。 「洋服に合わせやすいものを選べば大丈夫だよ」  売り場には有名ブランドの高級品がたくさん並んでいた。  こうして見ると、どれもすごく素敵。 「ね? きれいでしょう?」 「なるほどね。おふくろ、あんまりおしゃれに興味を示さないから、こういうのもいいかも」 「これからの季節は暑くて首に巻けないから、バッグの持ち手に結びつけるとかわいいかもしれない。ほら、こんなふうに」  わたしは自分のバッグに軽くスカーフをあててみた。 「最初はこんな感じで使ってみたらどうかな? 簡単でしょう? で、秋にはジャケットを着て首に巻いたり、ブラウス一枚に合わせたりして。それだけで雰囲気が変わるよ」  冬馬くんは半分ポカンとしながら聞いていたけれど関心は持ってくれたみたい。商品棚から何枚か手に取って、真剣に眺めていた。
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