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(side 輝)
大学卒業後、念願のひとり暮らしをはじめた。ワンルームのアパートはかなり狭いけれど、自分好みのインテリアやカーテン、キッチン用品などをそろえ、とても快適な空間だ。
わたしは都内にある食品関係の会社に勤めている。今年で社会人二年目。ようやく会社にも慣れ、仕事にもやりがいを感じつつある今日この頃。
「……んっ……んん?」
そんなわたしのアパートにときどき迷い込んでくるのは藤城冬馬くん。
なんとなく気配を感じて薄目をあけると、冬馬くんはカジュアルなチェック柄のシャツを脱いでいるところだった。
「ごめん、起こしちゃった?」
「うん……それより……また朝帰り?」
「まだ朝じゃないよ」
ベッドサイドの目覚まし時計を見ると、明け方の四時少し前。六月のこの時季、外はまだ薄暗いけれど、じきに夜が明ける時刻だ。
「じゅうぶん朝だよ」
「でもまだ出勤まで時間あるから、ちょっとだけ寝かせて」
そう言って冬馬くんはベッドに入ってくると、わたしをうしろから抱きしめてきた。
シングルベッドだからふたりで寝るときは身体を寄せ合わせないとベッドから落ちそうになって安眠できない。そのせいなのかな。こうやって眠るのは冬馬くんの癖みたいになった。一緒に眠るとき、冬馬くんは必ずわたしをこうやって抱きしめた。
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