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「また女の子と遊んでたの?」
「つき合いだよ。誘われちゃって」
「ああ、合コンね」
冬馬くんはなぜか彼女を作らない。今日みたいに合コンしたり、女の子とデートしたりはするけれど、それはいわゆる“遊び”にすぎない。
ふいに冬馬くんからふわっと甘い香りがした。
「朝帰りするなら自分のマンションに帰ってよ。なんでわざわざここに来るの?」
「だってここからのほうが会社に近いし」
「それじゃあ、なんのためにひとり暮らしをはじめたのかわかんないじゃない」
「まあまあ、そう固いこと言わないでよ。それより寝よ?」
冬馬くんはいつもこんな調子だ。もう、人の気も知らないで。
「あっ! ちょっとだめだって!」
「え? だめなの?」
「だって眠いんだもん」
「でも我慢できない」
「冬馬くん、夕べほかの女の子としてきたんじゃないの?」
「なんで?」
「だって、においがするから」
触れあったあとのにおいがする。いまも冬馬くんからしているそれは明らかに女性用の香水だ。
「ああ、これね。女の子のなかにすっごくきついにおいの子がいたんだよ。きっとその子のだよ」
「別に隠さなくてもいいよ。お互い束縛し合う関係でもないんだし」
「じゃあ、なんで怒ってんの?」
「怒ってなんて……」
冬馬くんの言う通り。たしかにわたしは怒っていた。
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