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気取らないこの感じにほっとする。おしゃれなカクテルもいいけど、わたしはやっぱりビールかな。
「なに?」
「こんなふうに一緒にお酒を飲むなんて不思議だなあと思って。もともとファミレスのアルバイト店員とお客様の関係だったのに」
「俺たち縁があるのかな。振られた者同士……なんてね」
ありえないつながりで、年月が経って再会した。いまはそれぞれ生きる場所があって、わたしには冬馬くんという失いたくないと思える人に出会えた。両思いではないけれど、冬馬くんと一緒にいられる時間はわたしにとって宝物だ。
でもサイジさんは? ちゃんと幸せを感じてる?
「あの……サイジさんは、その……」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってかまわないよ」
「まだ実紅さんのことを好きなんですか?」
だけどサイジさんはわたしの質問に答えることをせず、缶ビールをテーブルに置き、ゆっくりと立ちあがる。それから部屋に常備してあるプレッツェルやポテトチップスなどのおつまみを持ってきた。
でもなぜか……。
サイジさん?
わたしの隣に座った。
「輝ちゃんは、あれからあのふたりにあった?」
返事に困った。サイジさんは、ふたりが結婚し、子どももいることを知っているんだろうか。
「会ったんだね」
「え?」
「顔にそう書いてある。そっか、ということは、あのふたりは結婚したのか。あれからもう四年だもんな」
懐かしむわけでなく、淡々と言う。祝福しているという感じではなさそうだった。
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