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でもわたしの予想に反して、冬馬くんはわたしをちゃんと見てくれた。わたしの目を見てキスしてくれた。それだけでうれしかった。誰かを想って抱くのではなく、わたしの身体を愛してくれているんだと思わせてくれた。おかげで、わたしは擦れることなく、自棄になることもなかった。
ぼろぼろだったわたしを救ってくれた冬馬くんだったから一度だけで終わらなかったんだと思う。あんな幸せな気持ちを味わえるのなら、何度だって喜んで受け入れる。
だけどわたしではサイジさんを救えない。サイジさんとだなんて絶対に無理! こんなの、お互いに傷つくだけだ。
「俺と輝ちゃんならきっとうまくいくよ」
「やめて! サイジさん、お願い!」
スカートをめくられてストッキングの上から太ももを撫でられる。手のひらがしなやかに動き、ぞわりとした。
鎖骨に舌が這い、首もとに顔を埋められた。
どうしてホテルの部屋にのこのこついてきてしまったのだろう。冬馬くんと一緒に二次会に行っていればこんなことにならなかったのに。
冬馬くん、助けて……。
助けに来てくれるわけないのはわかっている。だけど助けを求めてしまう。
これまで冬馬くんは何度もわたしを助けてくれた。
賭けの対象にされたわたしのために先輩である稲橋さんにつめ寄り、わたしの代わりに怒ってくれた。そのおかげで、わたしのショックは小さくてすんだ。
また、会社にうまく馴染めず、同期のなかでもひとり浮いていたわたしを気遣ってくれたのが冬馬くんだった。飲み会のときはわたしの隣に座ってくれて、楽しい話題を提供し、みんなとの仲を取り持ってくれた。
佐野先生に再会したときもそう。わたしの彼氏のフリをしてくれて、わたしのズタズタになりかけたプライドをふんわりと包み込んでくれた。
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