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冬馬くんはすごいよ。どれだけ心が広いの? なんの得にもならないのに、こんなにも尽くしてくれた。
「……とう……ま……くん……」
会いたいよ。いま、すごく会いたい。
もしいまここにいたら、「自業自得だ」と言って、叱りながらも助け出してくれたのかな。わたしね、冬馬くんの言うことなら素直に聞いて反省できるの。信頼できる人の言葉だから、自分の悪いところも全部認めることができる。
わたし、ばかだった。サイジさんのために、サイジさんを助けたいという、わたしのちっぽけなひとりよがりの正義感がこんな事態を招いてしまったんだ。
「……冬馬……くん……」
「輝ちゃん……?」
なぜか突然、サイジさんがハッとしたような顔をして起きあがり、わたしから身体を離した。
「……ごめん」
だけど謝ってもらったところで、すんなりと許すことはできない。わたしは顔を逸らした。
「よりによって輝ちゃんになんてことしたんだろう。本当にごめん」
サイジさんはソファに座ると、わたしの身体を起こしてくれた。わたしは無言で乱れた服を直す。涙をこらえるのに必死だった。
「輝ちゃんなら俺の気持ちをわかってくれているから、俺を受け入れて、楽にしてくれると思い込んでいたんだな」
ぽつりぽつりと話しはじめたサイジさんは頭を抱え、うなだれた。さっきまでの冷酷さは影を潜め、後悔の念にさいなまれているようだった。
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