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言葉につまっていたら、するすると冬馬くんの手が伸びてきた。パジャマの裾から肌に触れてくる。脇腹、おへそ、そして……。
「あ、ノーブラだ」
「大丈夫なの? 寝る時間減っちゃうよ」
「うん。どうしてもしたい」
冬馬くんは甘え上手だと思う。その性格と器量のおかげで、いろんな女の子が寄ってくる。
一方、わたしはずっとひとりだった。情けないことに佐野先生を引きずったままだった。
でも、そんなわたしを変えてくれたのは冬馬くんだった。
二ヶ月前、初めてわたしは冬馬くんと身体の関係を持った。軽い気持ちからではない。冬馬くんだからしたいと思った。
だけど、わたしたちの関係はいまもよくわからない。こうして一緒のベッドで抱き合う男女の関係なのに、恋人同士ではない。
布団をはぎ取って、冬馬くんは素早くTシャツを脱いだ。鍛えられた上半身があらわになる。男の人なのにすごくきれいだと思った。
そして、あっという間にわたしのパジャマも脱がされた。冬馬くんは焦るように素肌に吸いついてきて、全身をくまなく愛してくれた。
あんなに眠かったのに、いまはこんなにも気持ちいい。今日だけは太陽が昇らないでほしいと心から思った。
「あっ……冬馬くん……」
「ん? ここがいいの?」
「……うん」
「わかった。ここだね」
冬馬くんは毎回こうやって尽くしてくれる。冬馬くんに愛されている間だけ、自分が特別な存在だと錯覚できる。このときだけはわたしは幸せに満たされて、女に生まれてよかったと思えた。
でもそう思っている女の子はわたしだけじゃないんだよね。わたしを抱いたあの日から何人の女の子を抱いてきたの? わたしは冬馬くんだけなのに、冬馬くんはこれから何人の女の子を抱くの?
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