519人が本棚に入れています
本棚に追加
定刻通りに式典が終わった。現地解散となって、みんなそれぞれホテルを出ていった。
それから一時間後。
俺はホテルのロビーで悩んでいた。
あー! もうっ! いったい、あのふたりはどこに消えたんだよっ!?
どうしてなのかというと、俺は同期たちとの二次会を断って、輝のあとをつけたからだ。行き先の見当はついていた。輝が誰かと電話で話していたときに最上階にあるバーの名前を口にしていたからだ。間違いなくサイジと会うのだと思った。実際、その通りだった。
しかしさほど時間を置かずにふたりがバーから出てきて、エレベーターに乗り込んでしまった。その先は追うことができなかった。
仕方なく俺は電話をした。
輝、出てくれよ。願いを込めながらスマホを耳にあてる。だけどコールは鳴るが、輝が出てくれることはなかった。
マジかよ……。なんで電話に出られないんだよ? 輝はどういうつもりでサイジに会いにいったんだよ?
こんなことならもっと早く俺のものにしておくんだった。たぶん、輝にとって俺はかなり近い立ち位置にいるはず。なんだったら、佐野先生を除いた男のなかでは一番どころか唯一の存在だとも思っている。本気で迫ったら、なんとかなるんじゃないかと妙な自信もあったんだ。いまはそんなものはどこかに吹っ飛んでいってしまったが。
こうなったら最終手段だ。俺はホテルのフロントに向かった。
というのは、サイジがこのホテルに宿泊しているという話を思い出したからだ。女性関係が派手で、写真週刊誌に狙われているから自宅に帰らないんだろう。そう考えた俺は、サイジが輝を連れてわざわざ外に出ることはしないんじゃないかと踏んだのだ。
最初のコメントを投稿しよう!