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「このホテルにサイジさんって人が宿泊していると思うんですけど何号室ですか?」
フロントマンは警戒心を強め、顔を引きしめた。
「申し訳ありません。お客様の個人情報に関することはお教えすることはできません」
だろうな。そう言うと思ったよ。だけどほかに手立てが見つからないから、やけくそで聞いたまでだ。
「部屋に内線を入れてもらうことは可能ですか? 『藤城がロビーで待ってる』と伝えてほしいんです」
「申し訳ありません。そういったこともできかねます」
「そう固いこと言わずに。困ってるんです。どうしてもサイジさんと話をしたいんですよ」
「そう言われましても……。ご本人の携帯電話に連絡してみては?」
「それができるならとっくにしてますって」
輝からは一向に連絡がこない。音沙汰ないとはどういうことなんだ? 頼むから電話に出てくれ。メッセージを読んだんなら返事をくれ。俺は祈るような気持ちでもう一度電話をした。
「ちくしょう……」
だが、電話はつながらず、メッセージの返信もなかった。
これこそ万事休す……と思っていたら、ふいにかわいい声が聞こえてきた。
「冬馬くん、こんなところでなにしてるの?」
まさかと思って振り向くと、やっぱり輝だった。
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