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異形との対峙
アピアが触れそうなほど接近しているというのに。
間合いを取ることもできず、身動き一つとれない。立ちすくむばかりのエストの肩を掴み、ステラはすかさず後ろへと飛び退いた。
エストは恐怖に足がもつれステラの支え無しでは今にも崩れ落ちそうだ。そんなエストにステラは気付けの激を飛ばす。
「エスト、気をしっかり持て!」
「は、はい!」
アピアは目が見えていないようだが気配をとらえる精度が高く動きも素早い。一瞬の判断の遅れでこの場も血の海になりかねない。狭い場所では不利だ。
しかし、広い場所へ移ったからといって果たして応戦できるだろうか――。ステラの脳裏につい先刻見たばかりの惨状がよみがえった。
ここを離れれば『銀鱗』はどこまでもエスタを追って移動するだろう。それも、道々雑草を刈るようにラゾナの門下生を蹴散らしながら……。
「オズ様、ここで仕留めましょう」
「俺もそれを考えていた。あいつはこの中庭から出さない方がいい」
ふと、アピアがオズの方に顔を向けた。
『約束は絶対だ。部外者の異議など取るに足らない。エスタが二言はないと申したのだ』
「おっと。先ほどの話か? 通じているのか」
アピアがオズに向かって話し始めた。
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