SCENE1 廃校舎②

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 くうっ! 夏美は呻き声をあげながら、腕をふりほどこうとする。だが、非力な夏美では、男の握力には全く対抗できなかった。  それどころか、男は夏美の手首を掴んだまま、ぐいっと腕を差し上げていく。  軽々と、夏美の体が持ち上がる。男と夏美の顔が同じ位置に来たときには、彼女の足はフロアから20センチほども浮いてしまった。  「は、離して……」  必死に声を出す夏美。  男はふんっと鼻を鳴らすと、ぶら下がる夏美の鳩尾を、もう片方の手の拳で殴った。  「きゃぁっ!」  ものすごい衝撃を受けて、夏美は叫ぶ。  男が手を離す。夏美の体が落下する。だが彼女は、フロアにグッタリと倒れ込み、起き上がれなくなっていた。  あっ、あうぅぅ……。  鳩尾を押さえ体を丸める。全身に痛みが稲妻のようにはしり、手足はビクン、ビクン、と痙攣してしまった。
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