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くうっ! 夏美は呻き声をあげながら、腕をふりほどこうとする。だが、非力な夏美では、男の握力には全く対抗できなかった。
それどころか、男は夏美の手首を掴んだまま、ぐいっと腕を差し上げていく。
軽々と、夏美の体が持ち上がる。男と夏美の顔が同じ位置に来たときには、彼女の足はフロアから20センチほども浮いてしまった。
「は、離して……」
必死に声を出す夏美。
男はふんっと鼻を鳴らすと、ぶら下がる夏美の鳩尾を、もう片方の手の拳で殴った。
「きゃぁっ!」
ものすごい衝撃を受けて、夏美は叫ぶ。
男が手を離す。夏美の体が落下する。だが彼女は、フロアにグッタリと倒れ込み、起き上がれなくなっていた。
あっ、あうぅぅ……。
鳩尾を押さえ体を丸める。全身に痛みが稲妻のようにはしり、手足はビクン、ビクン、と痙攣してしまった。
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