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後退る鷹西。だが、タトゥー男の狙いは顔ではなかった。スッとナイフを引っ込めると間髪いれず身を屈め、鷹西の膝を狙ってなぎ払うようにする。
うわっ、やばっ!
鷹西が慌てて跳び退る。バランスを崩し、それを立て直そうとして上半身がぶれる。
タトゥー男はそれさえも狙っていたかのようにナイフで椅子を払い飛ばしてしまった。
丸腰となった鷹西。タトゥー男がジリジリと迫る。
余計な動きは一切しない。ただ、切っ先を鷹西の顔、心臓、太もも、とまるでターゲットを選んでいるかのように移動させている。それを繰り返す。
恐ろしいほどの圧力を感じ、鷹西は下がることしかできない。ジャケットを脱いで対抗したいのだが、そんな動きを見せたとたんに切り刻まれるだろう。それほどの使い手だと思われた。
警棒を取り出す隙もないし、居合いの達人である夏美ならともかく、出しても鷹西では対抗できない。
やばいな……。
窓まで追い詰められた。もう後がない。
その時、下の階から銃声が聞こえてきた。
なに? まさか、夏美……。
彼女の身に何かあったのだろうか?
心配になる。だが、目の前の男がそれを嗤う。
「仲間もいるのか? 心配か? そんなことより、自分だろう?」
くそう……。
背筋が凍る思いで、鷹西はタトゥー男を睨んだ。
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