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「三ツ谷君」瀬尾の視線が三ツ谷に向かう。「君には驚かされるな。とんでもない方法で、アメリカ国防情報局――DIAからの奥田達への支援を断ち切らせてしまうとは」
えへへ、と鼻先をこする三ツ谷。
「だがジェロン社は強かだ。おそらく今回のことでアメリカ政府から追及を受け、ある程度のペナルティが科せられ一旦は闇の事業から手を引くかもしれんが、また、必ず何らかの方法で日本にも手を伸ばしてくる。DIAも同様だ。今回は利用できたかもしれないが、CIAだって敵に変わる可能性はある。その時、日本の政府が正しい選択をできるかわからない。第二、第三の奥田が現れる恐れは常にある」
「その時は、我々警察官も試されますね。山下や霜鳥のような者達をはびこらせないでいられるか、しっかりと、目を光らせますよ」
三ツ谷が応える。夏美も頷いた。そして鷹西が引き継ぐ。
「マスコミも黙っていませんよ。峰岸さんという、3年前に殺害された森田氏の仲間が手ぐすねを引いています。今回のことだって、真実を伝えるために奔走するでしょう」
「3年前の爆破事件についても、必ず再捜査がされるはずです」
夏美が強く言う。
瀬尾は頷くと、最後に夏美をまっすぐに見た。
「月岡夏美さん、だったね」
「は、はい……」
同じように見つめ返す夏美。
「本当に、ありがとう。君は素晴らしい刑事だ。その、美しく澄んだ瞳をいつまでも持ち続けてほしい。そして、もっともっと良い刑事になってくれ」
そう言うと、瀬尾は頭を下げ、ゆっくりと背を向ける。
「はい。ありがとうございます。頑張ります」と応え、夏美が敬礼した。鷹西と三ツ谷も同様にする。
瀬尾が救急車に乗り込むまで、3人は敬礼を続けていた。
救急車が走り去ると、突然三ツ谷が姿を消す。
「あ、あれ? 三ツ谷さん?」
戸惑う夏美。
「おまえ、まさか光学迷彩マントを?」
鷹西が唖然とする。
2人の後ろに、スッと姿を現す三ツ谷。そして得意そうに微笑む。
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