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SCENE1 廃校舎⑦
鷹西は、振り向いてまたしても睨みながら見上げてくる夏美の瞳に、思わず惹きつけられそうになった。
どうしよう……? 俺は先輩達と違って、こいつに絶対に甘い顔はしない、と思っていたんだけど……。
だけど、可愛い。思いっきり可愛い。この大きくて潤んだ瞳に見つめられると、決意が揺らいでしまいそうだ。
鷹西はそんな思いを何とか振り払うために、夏美を睨み返す。
「わかってるなら、キャンキャン言うなよ」
「誰がキャンキャン言いました?」
「今言ってるじゃないか、おまえが」
「またおまえって言った。そんなふうに呼ばれる筋合いはありません。そもそも、この状況の元凶が鷹西さんの勝手な行動じゃないですか。全然反省してませんね」
「勝手な行動なら、おまえだって同じだろう」
「また言った!」
指を鷹西の鼻先に向ける夏美。
「人を指さすなよ」と小柄な夏美をあからさまに睨み下ろす鷹西。
その時「おい」と野太い声が響いた。
敵か? まだ残っていたのか?
2人して、身構えながら振り返る。
だがそこには、犯罪グループなどよりよっぽど恐ろしい男が立っていた。
「は、班長……」
徳田だった。鬼のような形相で、2人を睨みつける。
そしてその後ろには、徳田班の刑事達がいた。にやけたり、肩をすくめたりしながら成り行きを見守っている。
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