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「2人で勝手に動くな、と言ったはずだよな、俺は」
怒りを押し殺したような声で言う徳田。
鷹西は「い、いや」と言い訳を探す。隣では夏美が直立不動となって「わ、私は……」と声を震わせていた。
「この……」いったん目を伏せた徳田だが、ついに怒りを爆発させる。「馬鹿1号と馬鹿2号っ!」
ビクッとなって、夏美が目を伏せた。
鷹西は徳田に睨みつけられると慌てて「どっちが1号ですか?」とトンチンカンなことを言ってしまう。
「どっちでもいい! 何度言わせる? 勝手に動いて勝手に暴れやがって。ヒーローやヒロインになったつもりかっ? ふざけるな。警察にそんな者はいらないんだ。いい気になるんじゃない!」
怒号に後退る鷹西と夏美。
その大きな体で詰め寄ってくる徳田。
震え上がる2人。
「まあまあ」と声をかけたのは、徳田班の古参刑事、立木貢造だった。徳田の相談役と言ってもいい定年間近のベテランだ。徳田も彼の言うことだけは聞く。
立木に肩に手をかけられ、徳田は「ふう」と溜息をつく。
助かった、と思う鷹西。立木様々、だ。
ちらっと横を見る。夏美も横目でこちらを見ていた。目が合うと、2人同時にハッとなり、そして、ふんっ、と目をそらす。
「たった2人でこれだけの連中を抑えたんだから、大したものじゃないですか」
立木が反目し合っている2人を見ながら言った。
「つけあがるんで、あんまり褒めないでくださいよ」
頭をかきながら徳田が言う。そして、倒れている男達を連行するよう、部下達に指示をはじめた。
その大きな背中を見ながら、鷹西と夏美は、どちらともなくホッと息を吐く。
応援に来るパトカーのサイレンが、夜空に響き渡っていた。
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