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「おまえの上司は」と声が後ろから聞こえてきた。
ビクッとなり、顔だけ振り返る。
スーっと、Rが姿を現した。
「真実を公表するつもりはないらしいな。予想通りだ」
冷徹な声だった。何の感情も感じられない。
原木は恐怖を感じながらも、銃を向けようと勢いよく振り返る。
だが、その腕はRにがっちりと抑えられた。
「ま、まてっ」
目を剥く原木。
Rのフルフェイス・マスクの奧の目に妖しい光がともったような気がした。
次の瞬間、胸にこれまで感じたことがないほどの衝撃を受け、息を呑む。視線を落とすと、心臓辺りにサバイバルナイフが深々と突き刺さっていた。
がはっ、と大きく息を吐き出すとともに、原木も命を失った。
Rは、原木の胸からナイフを引き抜き、悠々と歩き出す。海を背にしばらく進み、ちらりと倉庫の方を向く。
ホームレスがドラム缶の陰から見ていた。視線が合うと、慌てて顔を引っ込めた。
Rは特に何事もなかったかのように、また歩き出す。そして、スッと空気に溶け込んだかのように、消えた。
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