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「花さん。ありがとうございます」
ペコリ、と頭を下げ、夏美は早速かぶりついた。
ウインクしながら「ふふ……」と笑う花さん。
「なによ、この娘。もう機嫌なおってる。ちゃっかりしてるなぁ」
呆れて肩をすくめる絵里。そう言いながらも、彼女もハナ・スペシャルにご満悦だ。
奧の席で、女の子が2人「おおっ!」と言いながら立ち上がった。
「ちょっと、環菜に清香、行儀悪いから座りなさい」
たしなめているのは熊野さんという女性で、小説を書いているらしい。この間、警察のことを知りたいから取材させてほしいと言われ、ここで一緒に食事をしながらお喋りしたことがある。とても楽しい人だ。
「だって、あんな美味しそうなものを見て、ジッとしていられるわけないじゃん」
清香と呼ばれた女の子が、当たり前のように言う。
「右に同じっ!」
環菜と呼ばれた女の子も、勢いよく手を上げた。どうやら2人、高校生らしい。
「はいはい、大丈夫。あなた達の分もちゃんとあるから」
花さんが笑顔で言った。
「やったーっ!」
その場で飛び跳ね、ハイタッチする環菜と清香。
「騒がしいっ」と熊野さんがテーブルを叩いた。その拍子にグラスが倒れ、水が零れる。
「わっ、ヤバイヤバイ」
3人が慌ててテーブルを拭き始めた。
なんか、愉快な人達だなぁ。どういう関係なんだろう……? 夏美が微笑みながら視線を送る。
「すいません。よりによって落ち着きのない方から上位3人でお邪魔しちゃって……」
熊野さんが頭を下げた。
「大丈夫。落ち着きのなさならこの娘達も負けてないから」
早苗が笑いながら夏美と絵里を指さす。
環菜達の方にもハナ・スペシャルが運ばれ、幸せそうに食べ始めた。
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