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しばらくすると「ところでさ、夏美ちゃん」と早苗が様子をうかがうようにのぞき込んできた。
「な、何ですか?」
「この前の話、どう?」
「え? イヤだって言ったじゃないですか」
慌てて首を振る夏美。
「何? 何? 何なの?」と興味深そうな絵里。
「週刊誌からグラビアの依頼が来たの。最前線の可憐な刑事って、ドラマの紹介みたいなタイトルだけど、それで夏美を撮りたいって」
「だから、私そういうの、絶対イヤです」
首だけでなく、両手も振ってことわる夏美。
「何でよ? いいじゃない。警察のイメージアップにもなるって、広報課長は喜んでたわよ」
「え? 夏美に? すごいじゃん。やっぱ、可愛いからなぁ」
絵里が嬉しそうに夏美の肩を叩いた。
そう言う絵里だが、すでに別の週刊誌でグラビア経験済みだった。華麗なる白バイ隊員、というタイトルで巻頭カラーを飾ったことがあるのだ。
「絵里さんがやればいいじゃないですか。前のグラビア、反響すごかったし」
夏美が叩かれた肩をさすりながら言う。
「私はもういいや。だって、あの後、写真撮られたりサインねだられたり、めんどくさいこと多くて、しばらく仕事にならなかったし」
「バイク雑誌からの取材とか、もうことわってるしね。もったいないな」
絵里を見ながら言う早苗。
「私もことわってください。全然、やる気ないです」
強く主張する夏美。
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