SCENE  3  Cafe「一花」

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 「一回くらい、いいじゃん」  「私も見たいな、夏美の水着姿」  「み、水着ぃ?!」息を呑む夏美。「水着なんて、もっとなし! 絶対なし!」  「夏美の水着姿見たら、鷹西さん、惚れちゃうかもよ」  絵里の言葉に、早苗が「なるほど」と頷く。  「なっ……」息をのむ夏美。その状況を思い描き、顔が赤くなっていた。「なんで鷹西さんが出てくるんですか?」  「あ、ヤバイ。地雷だった?」  わざとらしく口元を抑える絵里。  不意に、夏美のスマホが鳴った。  班長からだ。一瞬で表情が引き締まる。  早苗も絵里も、その様子を見て目つきが変わる。さすが警察官だった。  「月岡、休み中悪いが事件だ。本牧ふ頭のはずれの倉庫街で、複数の他殺体が見つかった。うちの班が向かう。来られるか?」  「行きます」即座に応える夏美。すでに立ち上がっていた。  詳しい場所を確認すると身支度を始める。着替えている暇はない。身分証も警棒も、常に持ち歩いている。  「事件?」と早苗が訊いてくる。  「はい。すみませんが、急行します」  「まったく。捜査一課ともなると、大変だね」  やれやれ、という感じで言う絵里。  ペコリ、と頭を下げ、夏美は急ぎ足で出口へ向かった。
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