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SCENE 4 本牧ふ頭の倉庫街
鷹西が現場である埠頭の倉庫街に着く頃は、すでに所轄や機捜が入り乱れ、初動捜査の真っ最中だった。当然鑑識も慌ただしく動きまわっている。
捜査本部は管轄である山手署に設置されるだろう。
県警捜査一課強行犯係から派遣されることになった徳田班からも、刑事達が呼び出しを受けて続々と駆けつけてきた。
班長である徳田の姿も見えた。立木と何か話している。傍らにいてたまに加わっているのは山手署の刑事課長だろう。
現場の様子をよく見て感じとっておこう、と鷹西は倉庫街を歩く。
すると、倉庫と倉庫の間の通路で、駆けてくる夏美と鉢合わせしてしまった。
「あっ!」と息をのんで立ち止まる夏美。
「おっ!」と同じく立ち止まり、彼女の顔を見つめる鷹西。
やっぱり可愛い……。い、いや、いかん。惑わされるなよ。
大きく息を吐き、そっぽを向く。「班長はあっちだぞ」っと顎で示した。
「そ、そうですか……」
そのまま立ち去ろうとする夏美。すれ違いざま、チラッとこちらを見た。
同時に鷹西も横目で彼女を見る。
「何ですか?」
「そっちこそ何だよ?」
昨日の一件もあって、どちらも表情が険しい。
その時、ドサッと音がして、更に「いてて」と呻き声が聞こえてきた。
2人同時に音の方を向く。
隣の倉庫前、いくつかの段ボールに足を取られたのか、男性が一人倒れていた。よく見るとホームレスらしい。
「大丈夫ですか」
夏美が駆け寄り、手をとって支えるようにした。
見るからに汚れた格好の男性だったが、彼女は気にしていない。
ふうん、とちょっと感心する鷹西。
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