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確か非番だったな。どこかへ出かけていたのか?
服装が明るかった。Tシャツにジャケット、デニムパンツ、というのはいつもと同じスタイルだが、黒っぽく機能重視で味気ない色合いだったのが、今日は淡いピンクがかった白とでもいうのか……全体的に何となくお洒落に感じられた。
まさか、デートか?
気になりかけたが、すぐに頭を振っておい払う。
鷹西も男性に近づき、夏美とは別の腕を持って支えた。
「おじさん、かなり酔ってるね? この辺は寝泊まり禁止になってると思うんだけど」
鷹西が言うと、彼は溜息をついた。
「わかってる。わかってるよ。すぐ出て行くって。何だよ、さっきまであんたらの仲間に話をしてたんじゃないか」
「俺たちの仲間?」
「ああ、警察の人だろ、あんた。こっちの人も……」と夏美の方を向くと、彼はギョッとした顔になり、慌てて体を起こし、彼女から離れた。
「ご、ごめんよ。なんかの撮影?」
「は?」怪訝な顔になる夏美。「どうしました?」
「あんた、女優さんだろ。それとも女子アナってヤツ? ダメだよ、俺、本物のホームレスだから。触ったら汚れちゃうよ」
そう言いながら、彼は鷹西にしがみつくようにした。
「俺はいいのかよ?」と憮然とする鷹西。
「私も刑事です。気にしないでください」
ニコッと笑う夏美。
「うそぉ」と男性は目を見開いた。「こんな可愛い刑事なんて、いるわけないじゃん。ねえ」
鷹西に同意を求めているようだが、なんと返していいかわからず戸惑う。
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