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SCENE 5 山手警察署 特別捜査本部
第一回目の捜査会議は、翌早朝となった。特別捜査本部が設置されたのは、やはり本牧ふ頭に近い山手警察署だ。
県警からは徳田班の他にも2班派遣されてきていた。殺害された人数の多さ、そして、彼らが銃を所持し、使用した痕跡も見られたことから、重大事件と判断されたのだ。
さらに、警察内の裏事情も関係していた。
被害者達は皆、極東エージェンシーという横浜に本社を置く警備会社の社員達だった。
この警備会社には、神奈川県警から退職した元幹部警察官が、重役や相談役として多く再就職している。いわゆる「天下り」だ。
元々この極東エージェンシーには黒い噂がつきまとっていた。特定の政治家や、それに連なる官僚らと癒着している、というものだ。
更に、警察内の一部組織とも黒い繋がりを持っており、非合法な活動を行っても握りつぶすことが可能なため、裏社会で暗躍している、とさえ言われていた。
そのようなデリケートな状況であることも鑑み、捜査だけでなく情報の扱いにも慎重にならざるを得ない。事件の概要、捜査状況等の公表をどの程度行うか、あるいは伏せるか、ということが問題となっている。
しかし、夏美や鷹西など捜査員達には、そんなことは関係ない。一刻も早く事件の真実を明らかにし、犯人を検挙する。それが第一だ。
会議の冒頭で、神奈川県警刑事部長が特別捜査本部長となることが発表された。だが、実質捜査の指揮を執るのは県警の管理官となる。今回は、霜鳥徹警視だ。
徳田が渋い顔をしていることに気づく夏美。
「班長、どうかしたんですか?」
隣の席に座った立木に訊いた。
「ウマが合わないんだよ、徳田班長と霜鳥管理官は」
苦笑しながら応える立木。
夏美も霜鳥の噂はある程度聞いていた。圧力に屈しやすい、あるいは、上からの意向にただ従うだけ、という悪い噂だ。
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