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科学捜査研究所の研究員は、通常の警察官とは違う。警察職員の一部ではあるが捜査権は持たない。
だが、まれに警察官が配属されることがある。三ツ谷がまさにそうだった。工学や物理学の実力を認められ、研究補助員として始めてから、あっという間に頭角を現し、若手でありながら研究所内に彼専用のラボを持つまでになっていた。
ただ、彼のことを疎ましく思う者達もいた。
事件捜査、そして犯罪抑止や撲滅のためには、持てる技術は全て駆使し、ネットを含め利用できる情報網はあまねく使う。外部組織や、時に海外の団体や組織ともつながるし、マスコミも適宜利用する――そんな三ツ谷の姿勢を快く思わない上層部や古参の警察関係者は多いのだ。
彼のずば抜けた情報収集力を捜査に活かしたいと考える刑事が多くいるのと同時に、彼のやり方を問題視し、隙あらば追い落とそうとする者達もいる。
非常に微妙な状況に立っており、三ツ谷自身、もっと気軽に動くことができ、人間関係の疎ましさを感じないですむところ――たとえばどこかの所轄の鑑識にでも移動できないか、と考えていた。
もしかしたら、今回の件の動き次第では、左遷というかたちでそうなるかも知れない。しかし、やり過ぎると左遷どころか、懲戒、いや、場合によっては身の危険さえも……。
それでも三ツ谷は、この件を放っておく気にはなれなかった。
所長の目の前に行くと、彼は驚いたような表情で三ツ谷を見つめてきた。
「どうした? 何か思い詰めたような顔をして」
「所長。昨夜の本牧ふ頭で発生した殺人事件の捜査に、僕も参加したいんですが。何とかなりませんか?」
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