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「え?」怪訝な表情になる所長。「なぜ?」
「非常に気になることがあるんです。この事件は、3年前に横浜市内で起きた喫茶店爆破事故に関係があると僕は思っています」
「3年前の爆破事故?」
「はい」と強く頷く三ツ谷。「僕は、事故ではなく事件だと確信していますが。いや、テロと言ってもいいでしょう」
「ちょ、ちょっと待て」慌てる所長。「何だか、厄介なことを持ち込むつもりじゃあないだろうな?」
「事件はどんなものでも厄介かと思いますが……」
「いや、君は、事件の裏の裏まで探り当ててしまうから、厄介さを更に大きくしてしまうことが多いじゃないか。3年前というと、あの、政界や財界からも圧力がかかったと思われる爆破事故のことだろう? そんな地雷みたいなのに、わざわざ近づいていくことはないじゃないか」
だめだ、これは……。
がっくりと肩を落とす三ツ谷。所長を咎める気もしなかった。彼が恐れるのも無理はない。下手に関わると、社会的な立場どころか命さえ危険にさらされる可能性があるのだから。
「わかりました」三ツ谷は決意した。あの人を止めるには、正攻法ではダメだ。「しばらく休暇をください。いつ戻れるかはわかりません。なるべく早くしたいとは思いますが」
「え? おい、まさか君、個人的に……」
「失礼します」
呼び止めるかどうか逡巡する所長に背を向け、三ツ谷は科学捜査研究所を後にした。
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