SCENE 1 廃校舎

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 しかし、最初こそおとなしくしていた彼女だが、三ヶ月もするとその破天荒さを露わにした。まず、強すぎる正義感と、それを隠さずに主張するまっすぐさで、班長の徳田にさえ意見し、時に反抗する。  正しいと思ったことは一人でも実行する。その行動力は、それまで単独で動くことが多く問題児と言われていた鷹西さえ、呆れさせるほどだ。  危険な捜査にも積極的に参加し、むしろ先陣を切る。  小柄で華奢な体、時に儚げにさえ見える淑やかな顔つきからは想像もできないが、あらゆる武道に精通していて、特に居合道は達人級。警棒を持った時の強さは一人で特殊部隊に対抗できるのではないか、とさえ思えるほどだった。  容姿と行動のギャップで、現在は「可愛さの無駄遣い」と言われるようにもなっている。  すぐ下の後輩のため、これまで鷹西と組んだことはない。むしろ、どちらも問題行動が多いということで、離されることが多かった。  なので、あまり話をしたことはない。興味がないわけではない。むしろ気になる存在だ。鷹西とて若い男の端くれ。あれほど可愛い女性に目を奪われないはずがない。しかし、それを表に出すのはしゃくだった。  現在、彼女に厳しく接しているのは班長の徳田くらいだ。他の先輩連中は、むしろ彼女に優しすぎる。徳田に怒鳴られてしょげているところを優しく慰めたりさえする。俺の時は笑っていたくせに……。  鷹西は決めている。もし今後、月岡夏美と組むことがあったとしても、俺は絶対に、先輩達みたいに甘い顔はしない。可愛いからといって、特別扱いはしない、と。  あのじゃじゃ馬がいるのか?  もう一度ため息をつきながら、鷹西は校舎を振り返った。
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