SCENE1 廃校舎②

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 徳田班では夏美のすぐ上の先輩だ。強者揃いの徳田班の中では下っ端の方だが、なぜかあの人は、態度が大きい。  けして先輩達を蔑ろにするわけではない。きちんと敬ってはいる。ただ、単独行動が多く、自分の好きなように動きまわることが多かった。  そこは最近の夏美と同じなのだが、徳田や先輩刑事達から「この2人は……」と一緒くたにされるのが不満だった。  私はあんなに粗暴じゃないし。単独行動だって、あの人みたいに連絡や報告をいい加減にはしてないし……。  思い出して、つい頬を膨らませる。  その実力は認めている。検挙率の高さは夏美でもまだ適わない。  捜査における洞察力や情報収集力もかなりのものだ。優秀な刑事が多い徳田班の中にいても見劣りすることはない。むしろ際立つことさえある。  身体能力も抜群で、大学生の頃は柔道でオリンピック強化選手に選出されたらしい。数ヶ月前、ドラッグを所持していたプロの総合格闘技選手が職質に抵抗してきたために、逆に半殺しにしてしまった。  なにより、以前あのSAT(特殊急襲部隊)に推薦され、入隊直前にまでいったという。ただ、その頃発生した連続通り魔事件の犯人を追い詰め、怒りにまかせて病院送りにしてしまったことで入隊は取り消された。  感情をコントロールできないのが、マイナスと採られたようだ。  直情径行なのは、刑事として良いことではない。優秀なだけにもったいないと思う。  大人げないんだよなぁ、あの人は。それに……。
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