SCENE1 廃校舎②

1/11
322人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ

SCENE1 廃校舎②

 月岡夏美は裏門から入り、校舎の脇にある生物・化学実験室跡地の裏に身を隠していた。職員室とは渡り廊下でつながっている。  先ほど職員室を覗いたところ、反グレと思われる連中が7人ほどいた。あとは、密輸グループが来るのを待つのみだ。  班長達、間に合うかな……?  少し不安になった。非合法な取引は、手短に行われることが多い。終了前に来てくれないと、一人で何とかしなければならなくなる。  見込み捜査の段階だったので、拳銃の所持は当然していない。  夏美は、ジャケットに隠した警棒に手をやり、深呼吸をする   落ち着け、夏美。大丈夫。大丈夫……。  そうやって自分に言い聞かせていた時、突然、胸ポケットのスマホが震えた。  思わず「きゃっ」と叫びそうになり、両手で口をふさぐ。  取り出してみると、徳田からのメールだった。  『鷹西が同じ場所にいる。合流して、我々の到着を待て。絶対に2人で勝手に動くな』  あの鷹西さんが……?  読んでちょっとだけホッとした。頼りになる人が近くにいる。  だが、すぐに複雑な思いにもなった。鷹西という刑事はくせ者なのだ。アクが強いというか……。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!