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SCENE1 廃校舎②
月岡夏美は裏門から入り、校舎の脇にある生物・化学実験室跡地の裏に身を隠していた。職員室とは渡り廊下でつながっている。
先ほど職員室を覗いたところ、反グレと思われる連中が7人ほどいた。あとは、密輸グループが来るのを待つのみだ。
班長達、間に合うかな……?
少し不安になった。非合法な取引は、手短に行われることが多い。終了前に来てくれないと、一人で何とかしなければならなくなる。
見込み捜査の段階だったので、拳銃の所持は当然していない。
夏美は、ジャケットに隠した警棒に手をやり、深呼吸をする
落ち着け、夏美。大丈夫。大丈夫……。
そうやって自分に言い聞かせていた時、突然、胸ポケットのスマホが震えた。
思わず「きゃっ」と叫びそうになり、両手で口をふさぐ。
取り出してみると、徳田からのメールだった。
『鷹西が同じ場所にいる。合流して、我々の到着を待て。絶対に2人で勝手に動くな』
あの鷹西さんが……?
読んでちょっとだけホッとした。頼りになる人が近くにいる。
だが、すぐに複雑な思いにもなった。鷹西という刑事はくせ者なのだ。アクが強いというか……。
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