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目を覚ました千絵は何も疑うことなく、着替えも何もそっちのけで家を飛び出し、走り続けて今、海岸までたどり着いた。
そこには本当に愛衣華がいた。明け方の、陽が昇らない水平線を見つめながら、何も変わらずに絵を描いている。
その絵を後ろから覗けば、そこにはやはり、千絵には見えない何かが描かれていた。
恐怖と共に、跪きたくなるような威光。息も出来なくなっていた。
「きにいった?」
それは最初の言葉だった。
愛衣華の言葉でやっと息を吸えたが、千絵は答えられない。ただ、ゆっくりと首を振っていた。
「そう」
その絵から何かが這い出てきて、千絵と愛衣華を包み込む。
海の中に引きづり込まれたようで、だが息は出来、何も見えないのに、周りを何かが蠢いているのは、愛衣華の姿は、はっきりとわかった。
「もう、いかないといけないの」
「わた、私」
「これはゆめよ。ながいゆめ」
「ゆめ」
「おきたらさよなら。きっとうまれかわれる」
「あなたは、あなたは私の」
「さようなら」
「神様、です」
体の内側を撫でるような甘い笑い声が、耳元で遠くで目の前で水の中から空から内側から聞こえて、そして、
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