五. ♡

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五. ♡

夜中を過ぎようという時刻、タカトとオディーナはマチが持ってきたサンドウィッチ(しゃきしゃきのレタスにハムとチーズを合わせ、シーザーソースを添えたもの)を摘みながら、今後の対策を検討していた。 猶予は残されておらず、ガモールらの策略が完全に成り立ってしまう前にひっくり返さなければならない。焦りを隠せないタカトと違い、オディーナは落ち着いていた。 親指を額に当てて、分かっている情報を吟味する。彼女の考えるときの例の癖だ。 まず、ガモールという男が書類を押収した意図は何なのか。恐らく、自分たちの横暴の数々を擦り付けるつもりだろうが、そのためには書類が邪魔だったということなのか。 となれば、ひょっとすると大叔父は告発に向けた手筈を整えていたのかもしれない。書類はそのための報告書で、王都からの使者に渡るところだったのではないか。 タカトにさえ一切の素振りを見せなかったのは、漏洩する危険を少しでも避けるためだったとすれば説明がつく。 では、それらは既に処分されてしまったのだろうか。それにはまだ早い、とオディーナは考えていた。ガモールとやらが自身の悪行を転嫁したいのなら、むしろ大叔父がやった証拠として逆利用するはずだ。 最悪の場合、自白書を強要したうえで大叔父に自害するように追い込むかもしれない。 それらの状況証拠と何らかの物証(当然これは本来ガモールの所業である)を合わせれば、王都を騙すのも不可能ではないだろう。 オディーナはだんだん、そうとしか考えられなくなっていた。 死人に口なしというように、連中は大叔父をはじめから生かしておくつもりは毛頭ないのだ。 ――これは相当な正念場ってわけですか 両手を組んだまま、タカトの方へと向き直りオディーナが言った。 「それでタカトさん、例の粛清計画に加わるはずだったお仲間さんを改めて確認したいのですけど」 タカトは懐から一通の封書を取り出した。中には横長の紙が一枚折りたたんである。 「これを見て頂ければ」 いわゆる連判状にあたるもので、タカトを含めた九人の同志の名が連なっていた。 「ここに名がある者は斬り込み役で、各自が担当する者を斬る。後は敵を逃がさないための見張り役が百人、随所に配置する手筈でした」 「ふむふむ。思ったより戦力は集まっていたのですね」 「ええ。主核となる人物は絞りましたが、補助的な動きをできる味方は多いに越したことはないですから」
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