六.

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六.

タカトが飛びだしてから三時間ほど経った後、家畜小屋の外からひたひたと歩く気配がした。オディーナが引戸の隙間からそっと覗くと、暗闇の中からこちらを伺う人影が複数見えた。どうやら無事集めて戻ってきたらしい。 オディーナはゆっくり戸を開けて、タカトたちを中へ入れた。 「おお、オディーナ殿」とタカトが寄ってきて、 「言われた通り、某を含め精鋭五人、集めて参りました」 「さっすがタカトさん、素早い帰還で何よりです。ふふっ、こっちも待っている間に収穫がありましたよ」 タカトの後ろには、これまた背丈の立派な四人の男が並んでいる。 「明かりが消えているようですが」 「それがさっき言った収穫の出来事に関わっているんです。まぁ、付けてみれば分かりますよ」 一人が手に持っていたランプに火を灯す。 すると、地べたに転がる人間が全部で三人、全員が恍惚の表情を浮かべて、どこか別世界にでも飛んで行ってしまったような雰囲気である。 「三人も」と、タカトは驚いた。 「一緒にやって来たわけじゃないですよ」とオディーナは答えて、 「手前から順に別々のタイミングで来たんです。幸いにもいきなり襲われなかったので、アレコレ弄って戴いちゃいましたけど」唇を舐めて妖しく微笑んだ。 「はぁ。それは置いておくとして、残りが来る可能性は十分にありますね」 「それだと都合がいいですねぇ」とオディーナが言った。 「門の防衛に残ってるのが四人、ここにいる三人を除いて中を徘徊しているのが三人。表にいる人たちも不審がって戻ってきたら手間が省けるんですけど」 「やはり全員を抑えるのが第一ですか」 「そうですね。とりあえず話を進める前に、わたしをそちらの方々に紹介して下さいな」 四人はようやく、オディーナと対面した。 「セガタ・カインだ」金髪で逞しい筋肉、目元に黒子のある男。 「ポックル・ポポです」ふくよかで愛想のいい笑顔を浮かべる男。 「ダン・ヅチマ」黒々と日焼けした肌に、大層な長髭をたくわえた男。 「アレク……です」どこか影のある雰囲気の、痩せぎすの男。 三者三様の並びに思わず興奮しそうになるオディーナだが、怪しまれて斬られては元も子もないので自制した。
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