六.

2/3
前へ
/36ページ
次へ
「そこに転がってる連中、生かしておく必要がないなら斬ってもよろしいので?」 紹介が済んですぐそんなことを言い出したのは、ポックル・ポポだ。 にこにこと笑いながら、恐ろしいことを口にする。どっしりとした外見とは裏腹に、ずいぶん手が早く出る性格らしい(最もこの土地にはそういう連中ばかりだが)。 「あぁ、それはダメですよぉ」オディーナが静止する。 「彼らはただ従っているだけの蟻ん子さんですから、きっと自分たちが何をやったのかの意味さえ分かっていません。皆さんには今回、なるべく殺生はせず鎮圧して欲しいんです」 「ほう」興味深そうな反応を示したのは、長髭のダン。 「では首魁のガモールを含め、生け捕りにしろと」 「察しが早くて助かります、ダンさん」オディーナが言う。 「——今回の作戦の最も重要な点は、如何に相手を法の下に裁かせて、こちらの理を証明するかなんです。殺してしまったら、印象が悪くなるのは明確で」 「そんなことは百も承知だ」セガタ・カインが話を遮った。 「——そういう後ろ向きな考えだから、あんな奴らに先手を打たれちまうんだ。連中は法を平然と無視して、義に反することをへらへら笑いながらやっている。ここに住んでる奴らがどれだけ不満を訴えてきたか、余所者のあんたは知らないだろう。もう力づくで倒す以外に道は無かったんだ、やるべき事はきっちりやるべきだと思わないか」 「それでも、不必要な死は避けるべきです」 そう言いながら、オディーナは頭の中で考える。 ——この暴れ馬たち、どうにかして抑えないとやべぇですね。 本心を言えば、人間がいくら死のうと構わない彼女であるが、殺生沙汰を起こせば間違いなくこちらの責任を問われる。両成敗にでもなったら最悪だ。 本来の目的から遠く外れた結末になってしまう。この村の人間社会に潜り込んで成り上がり、悠々自適に暮らすという野望も水の泡だ。絶対にこの男連中の血の気を抑えなければならない。 「勿論理由はありますよ。なぜならあの人たちは、自分で自分の首を既に絞めていますから」 「……それは具体的に、どういう」今まで口を閉じていたアレクが言った。 「彼らはタカトさんの大叔父を拉致っちゃいました」オディーナが続けて言う、 「——おそらく自分たちの罪を擦り付けるつもりでしょう。皆さんもタカトさんから大筋は聞いていると思いますが、恐らく押収した資料を悪用して自白書を書くよう脅迫しているはずです。そこで、私たちが大叔父さんを奪い返しちゃえば、自動的に罪が暴かれるという訳ですよ」 「そんな芸当、本当に出来るのかよ」カインの疑問に対し、 「困難であろうな。何せどこいるかも分からない人質を取り返すのだから」とダンが髭を撫でながら答える。 「まぁまぁ。そこはわたしの話を聞いてからでも遅くないですよ」 四人は一斉に前のめりになってオディーナを見た。 彼女の考えた計画はこうだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加