三. ♡

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三. ♡

「ふっふっふ、淫魔と枕を並べて寝るとはいい度胸ですねタカトさぁん」 先に寝たら味見しちゃいますよ、と旅行先の学生のように興奮していた当人はたちまち眠り込んでしまったため、タカトはひとり夜空を見上げていた。 栄養のある食事に酒盛り、暖かい布団、何もかも久しく味わっていなかったのだろう。 溜まりに溜まった心労は、サキュバスとしての本能さえも上回るほどだったらしい。 毛布に飛びついて数刻、小さな寝息が聞こえてきた。 一方タカトはというと、怒りの炎が未だ燻っているのか、寝つきの悪い様子。 思い浮かぶのは、常に悠然たる態度を崩さない大叔父の朗らかな顔と、故郷の膿である毒虫どもの風貌。王都に追いやられたことは未だに納得できていないが、もし本当に奴らが大叔父を食い物にしようと企んでいるのなら、親族としても見過ごすことは出来ない。 「明日、ひっそりと戻って探りを入れてみよう。全てはそれからだ」 そう決心してタカトが振り返ると、やはりオディーナは幸せそうな表情で眠っていた。 打ち解けてきたとはいえ、彼女が人を誑かす魔性の類であるのは間違いない。 その助力を得たのは、果たして吉と凶、どちらに転ぶのか。 漠然とした不安と期待が綯い交ぜになった心境のまま、ようやくタカトは床に就くのであった。
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