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タカトが目覚めると、隣で寝ていたはずのオディーナの姿が見当たらなかった。
今朝の気候はやや冷え込んでいる。昨夜の酒の量を鑑みるに、用を足しにでも行ったのだろう。そう考えたタカトは、朝の湯汲を済ませようと風呂へと直行したのだが。
「あっ、タカトさぁんいらっしゃ――」
「失礼致した」タカトはもはや目視すらせずに扉を閉めた。
そこに誰がいたのかは改めるまでもないだろう。
「なんでそう逃げやがるんですか、タカトさんのお馬鹿!」
くわっ、とオディーナの紅の眼が開かれ、一筋の光を放ったかと思うと、次の瞬間にはタカトが浴室へと移っていた。
「これは、転移の類の術か」一切対処できなかったことに驚きを隠せないタカト。
「ふふん、言ったはずですよ、搦め手は得意ですって。尤も短い距離でしか使えないのが悲しいところですけどね」
人が二人分、ようやく入れるような狭い空間。
とうとうタカトは、視線を反らせないほどの近さで淫魔の裸体を拝む。
目の前のオディーナは、大層引き締まった身体をしていた。
碌に食事にありつけなかったのも影響しているのだろうが、贅肉の付いてない胴回りはろくろのようにくびれており、そこからすらりと伸びた足は、太ももからつま先に至るまで摩擦を感じさせないほど滑らかな白肌で、一度触れたら延々と撫で回したくなるに違いない。
上を見れば、たぷたぷと揺れる左右対称の豊満なお乳。
百五十余りの背丈の彼女に不釣り合いなほどの大きさで、強い存在感を放っている。
釣り鐘型で張りのある乳房の先端には、髪色に似た淡いピンクの乳輪。
そこからピンと主張する乳首が、今にも吸われるのを待ち望んでいる。
瑞々しい唇にペロリと見える舌は、一度吸い付かれたら魂まで抜き取られるのではないか、そう想像させるほど魅惑的だ。
総括して、とても過酷な環境で生きてきたとは考えられない、性欲を掻き立てられるエロボディであった。
「さあさあ、そこにお座りなさいなタカトさん。サキュバス流・癒しの洗体テクニック披露のお時間ですよ」
怪しすぎる響きに、今にもこの場を離れたくて仕方ないタカト。
しかしそれは次の三つの事柄から、叶わぬ願いなのだ。
第一に、頼みの剣が手元にない。第二に、大叔父に万一のことがあればこの淫魔の力はきっと必要になる。第三に、金を部屋のどこに置いているのか彼女から聞かされていない。
あらゆる方向から外堀を埋められたと気づき、タカトはため息を吐いた。
「むぅ、こんな美人の裸を前にして、ため息ですか。やっぱりタカトさんはいけずですね」
「いや、失礼。そういう意味ではないのですが」
「ならさっさと座って下さい」少しむくれた様子でオディーナが言う。
その圧力に負けてしまったタカトは、観念したかのようにどさっと腰を下ろした。
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