その、記憶は

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あぁ。カミサマがもし、いるのなら、わたしは貴方を恨みます。 どうしてわたしは、こんな姿になったのでしょうか。 生まれ落ちた瞬間に、わたしは彼を探す運命なのだと、悟りました。 たった独りで、まるで運命の糸を辿るように、数日かけてこの場所までやってきました。 忙しない雑踏の中、降り出した雨を避けるように古びた商店街のアーケードの下に潜り込み、身を縮めて震えています。 通り過ぎる人たちがわたしに送るのは、同情や汚いものを見るような視線ばかり。 自分自身の命の灯火が、消え始めていることも分かっています。 彼は一体、何処にいるのでしょう。名前すら、分かりません。 ですが分かったところで、わたしにはきっとどうしようもないのでしょう。
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