004

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「夏休みだー!」 「夏休みだよ!」 「夏の休みね!」 気分がいいのか、かしまし娘達は夏休みだということを大きな声で言いまくる。 「何しようね、お祭りに花火大会、プールに行くのもいいね」 「気が早すぎない?ところで今日は暇かしら水着選びに行かない!?」 「楽しみすぎだよ!2人とも!超暇あいてる!」 キャッキャと騒ぐ女子たち、それを見つめるクラスメート。 「はしゃぎすぎだろあそこの三人」 「いや、あっちの4人組もやばいよ」 「ぎゃー!休みだー!いええええい!」 「「「うるせえ!」」」 「……ノーコメント。全く夏というものはすごい影響力だ」 「……騒がしいと思ったら、クラスの皆さん暑さでバカになっていたのですね」 騒いでいる、クラスに冷たく冷ややかな声が刺さる。 「……なんだよ三条橋、盛り上がってんだから邪魔すんなよ」 先程の声の主、三条橋綾芽はこのクラスにいる高飛車なお嬢様である。 「下品に盛り上がってるのが問題なのよ、全く低俗な会話だわ。あなた達の夏休みは庶民的すぎだわ」 「何おう!文句あるか!?お前だって楽しみだろ夏休み」 「ええ、ええ、楽しみですわよ。でも貴方喜びすぎじゃなくって?いつもと同じ夏休みなのに」 「悪いかよ!馬鹿お嬢!」 「……そんな口聞いていいのかしら、山田。貴方には普通の夏休みしか与えないわよ?」 「どういうことだ、三条橋様」 「ふふっ、今回夏休みは我が三条橋リゾートに遊びに来ませんこと?もちろんクラス全員もちろんタダで」 その言葉で教室中が沸いた。 学校が変形するくらいの声量で騒いだ。 高飛車なお嬢様は楽しいことが大好きなのだ。みんなを喜ばせるためにわざとあんなこと言ってたのだ。落として上げる。それが彼女のやり方。 かなりのいい人じゃないか彼女。 「ってことがあったから1週間留守にするねれっくん」 いつも通りの帰り道、バイクに揺られながら2人は話し始める。 「あーそんな時期か、気を付けて行ってこよいよ」 「そうそう、だから今日はイツメンで水着買いに行くんだ」 「ほーん、やばそうなの選んだら社会的に死ぬから気をつけろよ」 「そんなの選ばないよ!恥ずかしすぎるでしょ!」 赤面して答える。着るのを想像しただけでも恥ずかしい。 あと、布面積が少ないのなんかきたら、悲惨な結末が待っているし……。 ……もう少し年をとったら似合うかも?なんて淡い期待を抱いてみる。 でも、そうなっても絶対着ない。 だって、清純そうじゃなさそうだし。 「……水着なぁ、俺も買わねぇとな」 「ちょっと、私の答えに対して反応はですか?スルーですか?そしてれっくんもどっか行くの?」 「あぁ、知り合いに海に誘われたんだ」 「へー、そうなんだ。じゃあ夏休みプールにでも行く?」 「リゾートに行ってきたらプールなんて物足りないんじゃねえの?」 「そんなことないよ!あそこ行こ新しく出来たウォーターパーク!」 「はいはい、わかったわかった。だからそんなに揺らすな運転くるうわ」 楽しそうに、私達2人は夏休みの計画を立てる。 学生たちが楽しむ夏休み。 魔導士達も休めればいいのだけれど……
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