002

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金属をカバンから机にひっくり返し、イメージしながらパチンと指を鳴らす。 すると金属は私が思い描いた花の形に形成される。 机の上に並べられたインクの瓶から1つ選んで筆につけるそして念を込めて着色する。 「……こんどは爆発しなければいいけど」 私に無理やり髪飾りを作れと言った女の子はあの後デートに行ったらしい。爆発の影響で頭がチリチリになりながらのデートは上手くいかなかったみたい。少し申し訳ないので彼女にあげるはずだった髪飾りを作ってあげることにした。もう必要がないなら突っぱねてくれて構わない。これはただの私の罪意識を軽くする為の行動だ。 ……師匠もこんなことあったのでしょうか。 師匠と私の約束は私が師匠の役目を継ぐことである。 その昔、私の師匠は世界で1番強いと言われていました。師匠には仲間がいてそのうちの一人にとても執着されてたらしいのです。 その一人のことを師匠は諸悪の根源と呼んでいました。 その人は師匠のことが好きだったみたいです師匠が彼を振って彼は悲しみに溺れ悪の道に入ってしまいました。その時に作った魔道具が世界に散らばり人々を苦しめました。 それを回収するのが師匠の役目です。 師匠は何百年もそれを浄化して無力化してきました。けれど私と出会ったことで諸悪の根源に目をつけられてしまいました。 諸悪の根源は私を殺そうとしました、理由は彼女が受け入れた人間だったといことなのでしょう。けれど師匠が私をかばい師匠は死んでしまいました。 この前の人もそうですけどなんで人は愛という感情だけであんなにも恐ろしくなってしまうのでしょう?そんな1人に振られたくらいで闇に落ちるなんてと私は思ってしまいます。人なんて星の数くらいいるのに……。 「……貴方ねぇ。そんなこと言ってるからモテないのよ」 ……? おかしい、疲れたのでしょうか。聞こえるはずのない声が聞こえてきます。 懐かしく悲しい声、私の大切な師匠の声。 「何、ポケーっとしてるのよ。サヤカ、私よ」 「師匠なんですか? でも師匠はもうこの世にいないはずじゃ?」 ぽかんとしている、私を見つめながら師匠は話し続ける。 「夢よ貴方の夢の中に出てるだけ。貴方は考えてたら作業場でそのまま寝たの」 なるほど、どうりで体が軽いわけだ。 つねっても痛くない。 バチン 思い切り引っ張った頬が音を立てて戻る。 「でも、急になんででてきたのですか?今までこんなことありました?」 「あぁ、それは貴方が心配になったからよ。この5年間何の心配もなかったけど、今日の出来事で一瞬心配になったのよ」 今日の出来事…… 確かに、師匠が心配になることばかり起きました。けれどいつもよりちょっとばかし大変な目にあっただけです。そんなに心配になることなんてないはずですが。 「……うーん、何が心配なのかさっぱり」 「まぁ、そうでしょうね。まだ生きて14年しかたってないもの」 師匠は、はぁとため息をつきながら私に指をビシッとさして強い口調と厳しい顔でこう言った。 「貴方の相棒よ!相棒!なんでよりにもよって男なのよ!いい男ってのはね貴方が思ってる以上にねちっこくて面倒臭い生き物なのよ!?」 ……ただの個人的な理由でした。 「まぁまぁ、それは師匠の失敗談でしょう。それにれっくんはそんな人じゃな……」 「何年の付き合いだか知らないけど、長年付き合っても分からないことはあるのよ!貴方はそいつのことちゃんと理解してるの!?」 話をさえぎって師匠はとっかかる。 諸悪の根源と何があったのか、その何かのせいで殺しあってるわけだし師匠の言ってることも一理あると思うのですが…… 「いや、そう言われても……というか師匠こんなこと言うためにわざわざ来たんですか!?もっと私のピンチの時に来てくださいよ!色々あったでしょ!?」 「……いいよく聞きなさい、貴方は強い。だから大体のことは私が心配しなくても乗り越えられる。けれど!貴方はまだ若いガキンチョ!可愛らしい貴方ですもの色んなやつが色目を使ってるくるわ!貴方に何かあったら心配なのよ!いい、あの相棒と早々に解散しなさいでないと……」 「でないと?」 「私みたいになるわよ」 ピピピッピピピッ 「ふあっ!」 響くアラームの音が私を夢の世界から現実世界へと引き戻す。 師匠の顔がズームなって私の夢は終わりました。 全く師匠は変なところで心配性なんだから……大丈夫ですよ、師匠が思ってるようなもんじゃ私も彼もないので。
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