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律紀が下を向く。
「私は、殺さないでくれ。助けてくれ。そう言って叫んでいる男性をナイフで殺しました。柚希は、隣でそれを呆然と見ている女性を殺しました。私たちとそれほど歳が変わらない子供2人は流石にちょっと後味が悪いよね、と言って先輩の隊員が殺しました。」
律紀が溜息をつく。
「なにか大きなものを、大事なものを失ったような気持ちになりました。どうやって家に帰ったのか全く覚えていないのですが、その気持ちだけは今でもありありと思い出すことが出来ます。気づいたら私と柚希は帯人さんの腕の中でした。帯人さんは泣きながらごめんな、と言って私たちの頭を何度も撫でてくれました。」
「その時から週に2度くらいの割合で私たちは国にとって邪魔な存在だと上が勝手に決めつけた人を殺していきました。半年すると、私は人を殺すことに抵抗を覚えなくなりました。でも柚希は違った。人を殺すと、必ずその人に手を合わせていました。柚希は優しい子だから…。」
律紀は少し悲しそうに笑った。
「それからまた時がたって、2年前、私は帯人さんのもとを離れ、一人暮らしを始めました。柚希とは仕事の系統が少し違っていたのであまり一緒になることが少なくなりました。私はターゲットをただ殺すだけの短期間の仕事が多かったのに対して、柚希はターゲットと関係を気づいた上で安心させて殺すといった長期の仕事が多かったのです。柚希にとって辛い事だったと思います。信じていたのに、という言葉が1番辛いと言っていました。」
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