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その男と目があった時、柚希はまるで頭を殴られたような衝撃を受けた。体がふらついたが、倒れている蓮と祥悟が目に入り、足に力を入れる。
「久しぶりだね、柚希。」
ゆっくりと男が言う。
「ちゃんと覚えているかい?」
柚希がゆっくりと目を閉じて、もう一度開く。
「思い出したよ。…久しぶりだね、律紀(りつき)。」
男────律紀は、満足そうに頷いた。
「なんでこんなことをしたの?」
柚希が瞳に怒りを見せながら律紀に聞いた。律紀は頭を下に向けて笑った。もう一度柚希を見た律紀の目は恐ろしい程冷たい。
「なんでこんなことしたの、だって?何を言っているんだい?お前の存在を消すためさ。お前は外に出ていい存在じゃないんだよ。今なら戻ることもできるけど、どうする?」
柚希が強く手を握りしめた。
「あんな所、二度と戻るものか。」
律紀はどこか楽しそうに笑った。
「だよね。言うと思ってたよ。」
律紀は一瞬で顔の表情を消すと、腰を落とした。
「じゃあ、殺すね。」
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