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律紀が倒れると、柚希は走ってぴくりとも動かない祥悟に向かって走った。
「祥悟さんっ!祥悟さんっ!」
柚希が体を揺すっても祥悟が起きる気配はない。
「柚希ちゃん!あまり大きく揺すらないで!」
呆然とする柚希へ狂華が走りより、柚希の背中に手を当てて、数回撫でたあと、そのまま周りの組員に指示を出し、祥悟と蓮に応急処置をするため救護室に行ってしまった。
目の前から祥悟がいなくなっても、柚希はその場から膝をついたまま立つことが出来ないでいた。
その背中にゆっくりと歩いてきた零王が手を当てる。
「記憶、少し思い出しました。」
突然、ぽつりと柚希が言った。
「…話してくれるか?」
少し間が空いたあと、言葉を選ぶように零王が聞く。柚希はこくりと頷くと、初めて零王と目を合わせた。
「僕は公安警察の潜入捜査官です。」
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