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「帯人さん?誰?」
柚希が眉間にしわを寄せる。
「いいや、ごめんね。なんでもないよ。」
「そっか。」
そう言うと柚希は律紀の片手をとった。
「ねえ、律紀。あそこから逃げ出して僕と一緒にここにいようよ。ここは優しい人達ばかりなんだ。」
「それは難しいよ、柚希。」
律紀はもう片方の手で柚希の手を優しく離させた。
「僕の居場所はあそこなんだ。」
「でも!!」
「お喋りはこれでお終い。竜童組の人を呼んでおいで。」
律紀は柚希の唇に人差し指を置いて笑った。柚希はまだ言いたいことがあるようだったが、律紀がもう何も言わなさそうだということを悟ると、溜息をついて律紀に背を向けた。その背中に律紀が声をかける。
「柚希。」
柚希がゆっくりと振り向いた。
「今から竜童組の人を呼びに行くだろう?柚希は来ないで欲しい。」
柚希は少し泣きそうな顔をしたが、やがてこくりと頷いて、部屋を出ていった。
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