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「もし、死ぬなら何処で死にたい?」
これはその人の倫理観や人生論が分かる定番のような質問だ。
僕の回答は 『満天の星空の下』 だ。
残念ながらこの都内では絶対に叶うことこない我儘ではあるが。
だからという訳では無いが、最初に会ったあのプラネタリウムに行けば那由他さんに会うことができるのではないかという淡い期待を胸に抱き足を運んだ。
勿論、そうは事は単純では無かった。
昼間の都会の雑踏とは裏腹に、ドームの中にはとても閑静な空気が漂っていた。
「矢印は、超新星爆発を起こしたM67です……。プラネタリウムでは光の一点ですが、実際は100個程の星の集まりで……。」
なんだか、アナウンスまでもが物悲しいものの様に聞こえてくる。
「そして……あの星団から一つの星が消えた………。いずれ……地球も………。」
そう呟いたら、何故だか目尻が熱くなった。
ふと、左肩を叩かれた。
なるほど、小太りの那由他さんらしいふくよかな手だった。
「あっ!!」
振り返ってみると、那由他さんがそこに立っていた。
「どーも久しぶりです。モスクワに出張してたもんで……。」
そう彼は言った。
「な、那由他さん……あ、あの超新星は……‼︎」
「………同僚の失敗なんです。私が派遣された時はすでに手遅れでした……。」
そう言って彼は隣に腰掛けた。
「しかし小尾さん…地球は大丈夫ですよ…。じっくり時間をかけましたからね……。」
二人で人工の満天の星空を見上げた。
「あの……僕たちは、いい担当に恵まれた訳ですか?」
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