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中東戦争の拡大によって、原油の値上げや
戦争外需、不安定な株価などで世間は何処と無く騒然としている。
僕は少々うんざりしていた。
今日も今日とて、同僚達とラーメンを啜ってた時のことだ。
古ぼけたTVからは、時間帯の所為もあって
エンタメニュースが流れていた。
大半は前髪の長いミュージシャンのことや
季節のスポーツ、お世辞にも上品とは言えないような映画の話などリテラシーに欠けるもので、
右から左へ聞き流していた。
丁度、その時だった。
「で、都会の空でもよ〜く見えます。この時間ですと、天頂よりやや東に月ほどの明るさで輝いています。」
そう柔かにコメンテーターは発言した。
「今回の超新星爆発は、1604年以降最大規模のもので、かに座の散開星団、メシエ67で観測されました……」
そう言ってコメンテーターは画像を指差して、
「……とはいえ、今、見えている光は、2700年前のものですね。
M67は年寄りの星団で、文明が存在していた可能性もありましたが、それも消えてしまいましたね。」
と、続けた。
僕は勢いよく立ち上がり、眼を見開いた。
『メシエ67……全く…悲しい結末ですよ。』
那由他さんの言葉が脳裏に浮かんだ。
消えたんじゃない……!消したんだ!!
「はるかな昔……未熟で危険な文明を消したんだ!!………あの人たちは……‼︎」
それからというもの、僕は那由他さんの居場所を探し続けた。
他の生物に何一つ寄与することなく、他の生物の憐みのおかげでやっと生きていける人間
……そのことにすら気がついていない人間。
核という自分達の手に負えない物を使用し、
戦争や貧困、縄張り争いなどの同じ過ちを繰り返す人間。
そんなバグ塗れの人類のデバッグに愛想を尽かしたのだろうか。
電話をかけても女性の機械音に繋がるだけ。
マンションのドアホンを鳴らしても何のリアクションも無い。
僕は街中を探し回った。
電気屋の横を通ると新品のTVが店頭に並べられていた。
丁度、中東の武力紛争のニュースが映し出されている。
「ワルシャワ条約軍に対し、NATO軍は、即応戦の構えを見せて……」
と、アナウンサーが告げた。
僕は画面に顔を近づけて、
「那由他さん………地球も消すつもりか⁉︎」
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