医者という名の変態の憂鬱

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医者という名の変態の憂鬱

 ゆったりと喉と潤すそれに、サイラスはほぅっと息を吐き出した。 くるっと回し揺れる液体。深い色味のそれは見れば見るほど美しく何を見ているのかわからなくなる。  新たな解剖体が手元にやってくると、探究心が刺激されあれこれほじくり回すことは楽しすぎて、時間を忘れることなどしょっちゅうである。そんな日々にサイラスは満足している。  知的探求。それが己は人より異常に強いのだろうと理解している。理解したところで、サイラスは()()いうものだから、だからどうしたも何もない。  やりたいからやる。知りたいから知ろうとする。知るためには研究する。解剖して解明していかなければならない。それはどこまでも際限なく、楽ませてくれるのだから仕方がない。  例えば、赤いガラスを作るのには金を使うのだが、温度管理が難しく黒っぽくなったり茶ぽくなったりと面白く難しいのと一緒だ。 次はどうしよう、どの条件でなど、思考は尽きないものだ。  そして、目の前の青年。  最近、ここに出入りするようになったエドモンドは実直を地でいくような男だ。 サイラスを含め一族の者は、斜めに物事を見て捻くれ頭がどうかしていると思う者が多い。その中で随分と珍しい部類で、ここ最近の興味の対象である。  だから、本当は汚さずもっと綺麗にできるのに白衣をわざと汚してみたりしてるのだが、いまいちその視覚効果は見られないようだ。
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