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エドモンド・スノーの苦労の日々
「赤って、どうして赤いんだろう」
職業医者という名の男が、そう呟くのではなく嘆いた。
無菌抗菌ではないが白い壁。ザ、手術室のようなその部屋は綺麗に磨かれ、壁一面には薬品、備品がところ狭しと並んでいる。
その前で、滴る赤い血がぽたりと落ちて、黒ずんでいくのを見ながら赤い色について不思議だとのたまう。
ここは緑深い山の上に、空に向かって堂々と聳える城の地下室。最上階からはまるで絵本のような街が一望できる。
視界には緑と茶が広がり、ところどころに色とりどりのカラフルな建物が並び、メルヘンの世界へと誘う。
均等に建てられ並ぶ建物、窓には小さな可愛らしい花が飾られ、妖精が隠れているとユーモアある大人はそうやって子どもに話しかけたりと、和やかな日常が繰り広げられる。
だが、城へと向かうにつれて茶色の建物ばかりとなり、石畳の街並みは中世騎士世界を思わせるものへと変わる。
それと同時に、人々の気配も徐々に物々しいものへと変わり、物陰では怪しい取引が行われていた。物取りも珍しくなく、あちこちで争う声がする。
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