エドモンド・スノーの苦労の日々

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 キュッキュッと縫合し針を置いたので、エドモンドは近くによってその傷跡を見た。 あっという間に仕上げられたそれは均等に美しく縫い上げられており、これなら時間が経つと目立たないだろうと思える。  長い指先が器用に無駄なく動いていく様は見ていて気持ちの良いものだ。 つくづく惜しい。これで変人でなければ華麗なる手捌きを素直に見惚れることができるのに。  なぜ、こんな変人、誰もが認める凄さと残念さが紙一重的な超絶変人が医者になったのか。 その疑問のまま、エドモンドは縫い終わった傷口にガーゼを貼るのを手伝いながら、溜め息と一緒にじっとサイラスの整った顔を見つめた。 「どうして医者に?」  ビリっと医療用テープを貼り切りしながら、深く関わらないでおこうと思いながらも、人として好意的な態度? を向けられればそれを貫くことができない(さが)。  しまったと思ったが口に出したものは仕方がなく、気になったのは本当なのでそのまま返答を待つ。  サイラスの鼻息がふふふんと荒くなり、エドモンドは一瞬手を止めてしまうほど警戒したが、返ってきた言葉は意外とまともだ。 「好きなことをしていたらそこに提示されたからに過ぎない。君はなぜ警備部隊に?」 「俺の生まれたは端の端なんです。一族の動きや他者との争いがあればまず割を食うのは自分たちなので、自分のことは自分で守ろうとした結果です」
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