医者という名の変態の憂鬱

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 間違いなくサイラスを変人認定しているだろう青年は、仕事のためとはいえ文句を言わずにそばにいて、色眼鏡だけではなくサイラスの中にあるものをしっかり認めているとわかる言動はとても紳士で男らしい。  そんなところも、ここ最近は観察していて楽しい対象である。  嫌がる相手を早い時間から飲みに誘い、やっと窓の外の太陽は傾き空が赤く輝き色を変える。 夕陽で朱に染まる彼の顔。柔らかさと寂しさが入り混じり時間を支配する。  サイラスは赤は赤でもこの朱が一番好きだ。他の色を飲み込んでしまうほどの色。染まって変わってしまう赤と譲らない朱。  変わってしまうことを憂うとともにその変化が楽しく、譲らない朱を見て悔しいと思うのに惹かれる。 その変化をこの男で逐一観察し研究してみたいのだ。鮮血で散らし最終的には己で染めてみるのもいい。 「朱に近づけば赤くなり、また墨に近づけば同じように黒くなる」 「ああ、確か中国の言葉でしたか。環境や他人によって多大な影響を受ける、支配されるってやつですね。あと、付き合う人はちゃんと選べと」  ぽそりと吐いた言葉に当たり前のように反応してくる相手に、サイラスは目を見張り、目も眩むような艶やかな笑みを浮かべた。 「よく知っているね。まさしく君が染まってくれないかと考えてたところだ」 「……染まりませんよ。それにあなたの赤は強すぎて、誰も同じ色に染まりようがないでしょう」
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