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そんな中を、エドモンド・スノーは黙々と歩いていた。
途中、怪しい声掛けも無視しチッと舌打ちされようが痛くも痒くもない。
むしろこっちが舌打ちしたいわっ、と溜め込んだフラストレーションにざわつく心をもてあましながら目的の場所に向かった。
迷路のような地下通路の薄暗い牢屋や拷問部屋の数々を横目に通り過ぎ、ガラス張りの大きなドアを開けたらそこだけ異質な近代的な空間が広がる。
ウィンという音ともに嘆く言葉。
「赤って、どうして赤いんだろう」
それは独り言なのか、エドモンドが来たから告げたのか微妙なところで、赤は赤だろうと目の前の人物を眺める。
その本人は今日も今日とて、白かったであろう白衣を真っ赤に染めて、手元にはそれどこの臓器? と専門医にしかわからない何かしらを持っている。
足元にある銀のゴミ箱には入りきらない臓器の山が見え隠れ。
それだけ血を見てきて、色彩感覚が狂ってきたのか、飽きてきたのかは知らないが、今日のテーマは赤らしいとエドモンドは嘆息し離れた椅子に座る。
立っても座っていても、目の前の人物は集中しだすとエドモンドの存在など忘れてしまう。必要なら気づき呼ばれるだろうと、ここでの仕事のスタンスもわかってきた。
ひょろりとした細身、垂れた眉と目元で優男のように見えるが、エドモンドはこう見えて一族の警備担当であり運動能力は高い。
ここ最近は、目の前の男──サイラスの相手も仕事の一つとして組み込まれた。
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